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【雑学】ハト時計さん、本当はハト時計じゃなかった

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みなさんハト時計って知ってますか?知ってますよね。

 

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こういうやつです。 

 

これが祖父母の家にありましてね。一定の間隔で時計上部の扉がバカッ!て開いて中からきったねぇ鳥が出てくるんですよ。年代物だもんで。それでその鳥が鳴くわけです。

 

「パッポー、パッポー、パッポー」

 

これ幼少の頃からずーーーーーーっとハトの鳴き声じゃねぇだろうって思ってたんですよ。だってハトって「ホルルァ、ポルルゥゥ(籠り気味)」みたいに鳴くじゃないですか。

でもハト時計から元気に飛び出してくる鳥の鳴き声はパッポー!なんですよ。これじゃまるでカッコウみたいじゃないかって思ってて。それであるとき聞いてみたことがあるんですよね。

 

「ねぇ、これって鳩っぽくないよね」

 

って。そしたらおじいもおばあも鼻息を荒くして

 

「いんや!これはハトだ!」

 

って言うんですよ。でも納得いかないんで私も言うわけです。いや!ハトの鳴き声は

 

「ホルルァ、ポルルゥゥ(腹から声出せ)」

 

だよ!って。

そしたらおじいもヒートアップしてきて、よーく聞いてみな!ちょうどもうすぐ鳴くぞ!って。

で、ハト時計のなかからハト(?)が出てきてこう鳴くわけです。

 

「パッポー、パッポー、パッポー」

 

「・・・」

 

「な?ハトだろ?(自信満々のおじい)」

 

「いや、どう聞いてもカッコーと同じイントネーs」

 

「ハトだろ?(威圧するおじい)」

 

「はい、ハトです。」 

 

このときからずっと見た目も鳴き声もカッコウにしか思えないあの鳥をハトであると自分に言い聞かせて生きてきました。あれはハトなんだと。昔の人にはきっとハトがこう見えていたんだと。

そうだ、なんかそう思ったらだんだんハトに見えてきたぞ!あれはハトだ!間違いない!そうだ!どこからどう見てもあれはハトなんだ!!と。

 

カッコウでした

ということで数年越しにふと気になったのでなんとなく調べてみました。そしたらやっぱりカッコウでした。マジでこの十数年の葛藤は一体なんだったんだ。

そもそもハト時計というのはドイツ南西(スイスとの国境に近い地方)のシュヴァルツヴァルト(別名:黒い森)で1783年に生まれたものと言われていて、発祥時期の明らかな文献は残っていないものの、17世紀頃には商人がこのハト時計を売り歩いていたのだそう。

毎時ごとに時計上の小さな扉から小鳥の模型が出てきて時刻の数だけ鳴いて時間を教えてくれるこの時計は、その可愛らしい見た目とどこか落ち着く鳴き声から多くの人々を虜にしていったそうな。

そんな発祥の地であるドイツではハト時計は『クックス・ウアー(カッコウ時計)』と呼ばれています。ちなみにアメリカやイギリス、フランスなどでも変わらずカッコウ時計の名で親しまれています。なんと鳩時計と言っているのは日本だけでした。

 

ここからは歴史のお勉強です

では、なぜ日本でのみハト時計と呼ばれるようになったのか。

それは日本では鳩が『平和の象徴』であったからという理由があるのではないかと言われています。

時は遡り明治時代。日本が明治維新を経て近代国家になっていこうとする頃のこと。当時、一番の問題になっていたのは貿易についてでした。

貨幣制度の整備など問題は山積みだったわけですが、その問題のうちの1つが時計や暦を西洋の基準に合わせることでした。当時は季節によって日没までの長さが変わることで、『1時間』という概念そのものも変動していました。

これは明るい=昼、暗い=夜という感覚的な概念が介入していたのと、昼時間・夜時間というそれぞれの計算式に基づいて割り出していた時間のために季節によってその計算式も変動していました。

 

そこで明治5年に江戸時代までの不定時法から現代の定時法に切り替える政策をとったわけですが、時同じくして明治5年は新橋~横浜間で日本で最初の鉄道が開業した年でした。

不定時法では鉄道の発着時刻も定めにくいという問題もあったため、定時法に切り替えることで鉄道のダイヤなども正確に組めるようになりました。

そんな頃に海外から時計が大量に輸入されましたが、これは大砲を発射する際に発射から着弾までの時間を計算し、砲弾を爆発させるタイミングを調整するために使われていたと言われています。

また、西洋では海を越えて航海するため、星の位置と時間を計ることで現在位置を正確に知る技術が編み出されました。

しかし、正確な時を刻む時計は当時は非常に高価なものだったため庶民が手軽に買えるものではありませんでした。そのため、庶民は安価な振り子時計などを使わざるを得なかったわけですね。

こうした正確な時を刻む時計を日本で作れるようになったのは機械の整備が整った明治の20年代になってからと言われています。

 

そして戦後間もない頃、1900年代に日本で最初に鳩時計を販売したのは手塚時計という会社だと言われています。創業初期の手塚時計はドイツから輸入した鳩時計を国内で複製し、海外に販売していました。

その後、機械の整備が進むと共に自社でもメイドインジャパンの鳩時計を作り国外へ輸出しようとしていました。しかし、これがなぜか国内で大ウケし、瞬く間に大ヒット商品となっていったのだそうで。

こうした時代背景から平和の象徴として親しまれていた鳩の「ポッポー」という鳴き声に似ているこの時計は『鳩時計』として日本人に親しまれていくのでした。

 

また、『閑古鳥が鳴く』という表現はお客さんが全く入ってないスカスカの店内のことを指して言いますが、この言い回しも実は日本特有のもので閑古鳥=カッコウは古くは商人たちから縁起が悪いとされ、かつカッコウは托卵する鳥として有名で、その様が育児放棄をする親をイメージさせるという風潮から鳩になったのではないかと言われています。

ちなみにドイツではカッコウは優しく可愛らしいイメージの鳥として親しまれており、カッコウの「クックー」という鳴き声を真似して赤ちゃんをあやしたりするんだそう。日本で言うところの「いないいないバー」と同じニュアンスで使われているため、カッコウ時計はフレンドリーで温かみのあるものとして親しまれているようです。

 

また1つ賢くなった

ということでハト時計は本当はハト時計ではないというお話でした。

なるほど。カッコウ時計は本来の姿を封じられてハト時計にされていると…。なんか魔女の呪いで本来の姿を封じられた王子様みたいなもんか。そのうえ縁起が悪いだの育児放棄だの好き勝手に言われたい放題で不憫で仕方ねぇ…。

今も昔も世間様の声で事実が捻じ曲げられたり抑え込まれたりするのは同じなんだなぁ…と、思わぬところでまた1つ日本のダークサイドに触れてしまった気がする雑学でしたとさ。

 

ちなみに、今どきの鳩時計は進化していて電池式の鳩時計は使用者の好みによってレトロなポッポー音を楽しんだり、本物のカッコウの鳴き声を録音した音声を流すこともできるのだそう。ちゃんと山びこもするんだとか。

そして部屋が暗くなればカッコウも寝て、次に部屋が明るくなるまで鳴かないんですって。くれぐれも店頭のデジタル鳩時計の明るさセンサーを塞ぐイタズラはしないようにね。いいか!やるなよ!絶対だぞ!(フリではない)