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【ドラマ感想】『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』は和製ウォーキングデッドっぽくてすごく良い

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出典:ゾンビが来たから人生見つめ直した件 | ゾンみつ | NHKよるドラ

 

NHKのドラマと言えば「朝ドラ」か「大河ドラマ」を思い浮かべる人が大半だと思うが、実はひっそりと放送されている深夜ドラマもなかなか味わい深いものが多いというのはご存じだろうか。

そんなNHKの深夜ドラマのなかでも「NHKが攻めている」といま話題になっているドラマ『ゾンビが来たから人生見つめ直した件(略して「ぞんみつ」)』が思いのほか面白くて、実は2019年冬ドラマのダークホースになり得るのではと思っている今日この頃。

ということで、この記事では、30分の放送で全8回という深夜に見るにはちょうどいいボリュームの本作の魅力をいくつかご紹介したいと思います。どうぞよろしく。

 

想像以上にちゃんとホラーしてるドラマ

本作の舞台はとある片田舎。寂れた商店街が哀愁を漂させていたり、ご近所付き合いの風土が生き残っていて、なんとも雰囲気の良い町に突如としてゾンビが発生する。

見慣れたゾンビ作品のお約束通り、ゾンビに噛まれた人は傷口からウイルスに感染しゾンビになってしまう。町の人々がそうとは知らず日常生活を過ごしているうちにどんどんと感染は拡大していき、町はあっという間にゾンビパニック状態になってしまう。

そんななか、なんとなく日々を生きている(=生きる気力を見出せない)無気力系の主人公でタウン誌のライターである小池みずほ、そしてみずほの高校時代の同級生であるスナック店員の君島柚木と、同じく高校時代の同級生である地元建設会社の事務員・近藤美佐江の3人を中心とする人々との人間模様を描きつつ、ゾンビパンデミックによって暴かれていくそれぞれの秘密や本性を描いたヒューマンドラマ&ゾンビホラー……というのが本作の大まかなあらすじ。

 

ストーリーとしては王道のゾンビものであり、展開もシンプルなため理解もしやすく、深夜にのんびり見るのにちょうどいいバランスである。何とも言えない緩さと雰囲気がテレ東の深夜ドラマを彷彿とさせるので、言われなければNHKのドラマだと気付かない人もいるかもしれない。もっとも、スポンサー企業のCMが一切ないというNHKならではの特徴ですぐにバレそうではあるが。

 

けれども、しっかりとゾンビの気持ち悪さが表現されていたり、友人・知人・家族がゾンビ化したときのホラー的演出や心理描写が丁寧に描かれていたり、だいぶ控えめではあるけれどちゃんとグロ描写もあるんで、個人的には規模の小さい和製ウォーキングデッドという感覚で今のところ見れている。第1話からまさかの割と濃厚なベッドシーンもあったし。それはいいのかNHK。

そのうえ、なぜか外部ではゾンビ化現象が騒がれていないことや、町から出る道路や橋は警察(?)に封鎖されているという設定も最新話で明かされ、じわじわと面白くなってきているという点もポイントが高い。

とある田舎町でウイルスの実験が行われている(=生きている人間が実験用のモルモットにされる)という、バイオハザードやデッドライジングで見たことあるような設定も次第に出てくるのかもしれないなぁ。制作にカプコン関わってんのか?

 

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意外とちゃんとゾンビしてます

 

ところで、本作はゾンビに噛まれてからゾンビ化するまでに若干のタイムラグがあるのだが、その過程がなかなかに興味深い。

まずは徐々に顔色が悪くなり、明らかに具合が悪そうな見た目になる。続いて頭がボーッとしてくるのか次第に訳の分からないこと(生前に強く意識に残っている記憶?)を口走るようになり、パイナップルの味や匂いがすると言い出す。

最終的に緑色のゲル状の液体を口から吐き出し、一時的に意識を失うとめでたく(?)ゾンビ化という流れなのだが、ウイルスが身体中を駆け巡る状態のことをパイナップルの味や匂いがすると表現するのはなかなか斬新だ。

また、生前に執着のある出来事を口走るという特徴のおかげで、主人公と別居しているクズ夫の本心がほんの少しだけ垣間見えるのだが、これがまたなんとも皮肉なもんで。

 

どうせNHKなんだし表現も控えめなんでしょと思ったら全くそうじゃないし、かと言ってホラーが苦手な人でも見れるくらいにはマイルドな仕上がりだし、たった30分のなかに様々な伏線や気付きがある、なかなかに計算されたドラマだと思う。

公式曰く、現代日本の諸問題をあぶりだす社会派ブラックコメディーとのことだが、もっと緩いもんだと思っていただけにこれは良い意味で裏切られたなぁ。

 

 

メジャーすぎないキャストが良い味を出している

 

民放局のドラマだと「今話題の俳優!」とか「大人気女優!」とか何かとキャストのネームバリューに頼って散々期待感を煽った挙句に内容がスッカスカでズッコケる、なんてことが往々にしてあるのだが、本作はキャスト陣もなかなか味わい深い面々が揃っている。

例えば第1話ではチョイ役ではあるがセクハラ上司に三又又三が出てきたり、コンビニの店長の塚地さんを演じるのはドランクドラゴンの鈴木拓だったりと、しっかり小ネタも挟んでくるユーモアがある。

また、商店街の隅でひっそり営業するスナック『ボヘミアン』のママを葛城ユキが演じていたりもする。

 

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こういうやつは真っ先に死ぬのがお約束…のはずなのだが

 

こうしたなかなかドラマではお目にかかれないレアなキャストを見る楽しみもあるが、劇中のキャラもなかなかに尖っているヤツが多くて、ゾンビが溢れる町のなかを颯爽とバイクで走り抜けるワイルドなピザ屋がいたり、とあるシンガーソングライターに憧れている人気のないユーチューバーはその名も「尾崎乏しい」。

ゾンビになってもその満面の笑みで存在感を発揮する神田くんはカワイイと評判だし、ドラマのプロモーションにおいては1970~1990年まで放送されていた伝説の子ども向け番組『できるかな』のノッポさんがゾンビになって出てきたりと、配役やキャラクターもなかなかに攻めている印象。いいぞ、こういう遊び心、キライじゃない。

 

ゾンビは人生を見つめなおすきっかけに過ぎない

前述の通り、現時点で既に満足感の高いドラマなのだが、本作のゴールはあくまで「人生を見つめ直すこと」であるため、ここから更に回を追うごとに考えさせられる場面も多く出てくるのだろう。

劇中ではゾンビ化した町をみて絶望するものや、これを機に人気を獲得しようとするユーチューバー、こんなときなのにいつもと変わらずくだらないことで喧嘩する親子などなど、いろんな人間の生々しいところなども描かれている。

もちろん主人公たちもそれぞれに悩みや秘密を抱えていて、そんな主人公たちが普段の何気ない生活にこそ幸せが転がっていて、思考停止で日々を生きることの勿体無さや、ついつい何かを諦めてしまったり面倒事から逃げてしまったりするという自分の弱さを、周囲の環境が突然、非日常になったからこそ気付いていくというストーリーはなんとも味わい深いではないか。

ついついゾンビを主体に見てしまいがちだが、ふとした瞬間にハッとさせられる言動が出てきてドラマを見ながら自分自身と重なる部分に気付けたりもするのも、きっと本作の楽しみ方の1つなのかもしれない。

 

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みずほー!後ろ!後ろー!

 

ちなみに製作スタッフはゾンビ映画界の巨匠、ジョージ・A・ロメロ監督に影響を受けていることを公言している。

世に出ているゾンビ映画のほとんどはこのロメロ作品に影響を受けていると言っても過言ではないのだが、アレンジされればされるほどに派手さを増していくゾンビ映画とは違い、本作はゾンビものの原点に立ち返り、あっさりとした表現で非日常が描かれるため、ロメロ作品を彷彿とさせるという意見もちらほら見られた。

個人的には町中にサラッとゾンビがいる風景が、星野源の『フィルム』という曲のMVを彷彿とさせてニヤニヤできた。

ということで、みなさんもこの王道の何度も見たことのある設定で人間模様を描く『ゾンみつ』を見ながら、あれこれと思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

それでは。