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【映画レビュー】『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』は現代に蘇ったシティーハンターを観れる傑作でした【ネタバレあり】

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出典:アニメ「劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>」公式サイト 

 

ずーーーっと気になっていた劇場版シティーハンターを早速観てきたんですけど、控えめに言って超最高でした。

実は公開前にこんなことを書いていたのだけれど、結論から言うとこれは全くの杞憂だった。

 

冒頭こそ「おや?」と思いつつもすぐにキャラクターたちの声が馴染んでくるあたり、やっぱりレジェンド声優ってすげぇや。キャッツアイ三姉妹のうち、亡くなられた藤田淑子の代役として1人2役を演じた戸田恵子も流石の一言だったし、衰え知らずというのはこういうことを言うんでしょうね。

それにゲストヒロインである進藤亜衣の声優を務めた飯豊まりえも初挑戦という割にはレジェンドたちと会話をしているシーンでもあまり違和感はなかったかなぁ。チュートリアルの徳井はあの変人キャラだからこその棒読み演技に助けられてた感はあったけれどw

ということで今回は声優たちの凄さのみならず『劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ』がなぜ最高だったのかを全体感を踏まえてつらつらと語っていきたいと思います。どうぞよろしく。

 

シンプルでわかりやすいストーリーがGOOD

本作は1980年代から90年代に放送されていた大人気アニメ『シティハンター』の実に20年ぶりとなる新作アニメで、総監督はテレビシリーズの監督も務めた、こだま兼嗣氏。

もちろん声優もオリジナルキャストを多く迎え、スペシャルゲストとしてキャッツアイの三姉妹まで登場するというファン眉唾物の内容となっている。

がしかし、ファンのみが楽しめる「続編」的な扱いなのかと言えばそうではなく、純粋に現代にシティーハンターが返ってきたという感覚で楽しめる内容となっており、ストーリーも実にシンプル。

 

あらすじとしては、不審な男たちにつけ狙われている女性・進藤亜衣は新宿駅前のもともと伝言板があった場所でスマホアプリ越しに「XYZ」という暗号を書き込む。

このXYZを書き込むことでシティーハンターに依頼ができるという噂を聞きつけたがゆえの行動だったのだが、半信半疑な亜衣は自警用のスタンガンを入手しようと歩き出す。

しかし路地裏に足を踏み入れようとしたところで不審な男たちに襲われそうになってしまう。もはやこれまでか…と思ったところに颯爽と現れたのはなんと冴羽獠だった。

こうして亜衣のボディーガードとして任務に就くこととなった獠と相棒の槇村香は、亜衣の仕事場である撮影スタジオに。そこで目にしたのは多くのモデルたちと肩を並べてポージングしている亜衣の姿。なんと亜衣は大人気モデルだったのだ。

とそこにクライアントである「ドミナテック」の社長である御国信司が現れるのだが、ハンマーを振り回す香の姿を見て御国信司が話しかけてきた。なんと御国信司は香の幼馴染だったのだ。

ここで会ったのも何かの縁と御国信司は香をデートに誘うのだが……というところまでが導入部分。

 

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亜衣のピンチに颯爽と駆けつける獠

 

実際に劇場でこの一連の流れを観ていると、もうこの時点でドミナテックの社長が怪しいことこの上ないのだが、案の定、早々に御国が本性をあらわしたのは笑いそうになった。

というか公開前の情報の時点で既に「なになに?この胡散臭い社長の声優は山寺宏一……あっ(察し)」ってなってたから、声優で誰がボスなんだかネタバレすんのやめーやって感じではあったのだけれど、最初から最後まで小物っぷりを如何なく発揮する小悪党な感じが実に愛おしいキャラだったかな。

ただまぁ強いて言えば進藤亜依というキャラクターについてはバックボーンがしっかりしていたけど、父の仇である御国真司に関してはただのイジメられっ子の復讐にしか見えなくてその理由の薄さだけは惜しかったかなぁと。

 

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亜衣は納得のヒロインでした

 

とここで読者の皆様におかれましては「いきなりボスの正体をネタバレすんじゃねーよ!」とお思いの方もおられるかと思いますが、本作の見どころはそこではないので安心してほしい。

本作の真のポイントは「オリジナルキャストが集合することによる安定感」と「至る場面で流れる懐メロ名曲の数々」によって「これが2019年に帰ってきたシティーハンターだ!」という堂々たる演出の数々を90分かけてじっくりと楽しむことにある。

前述した通りストーリーは良く言えば安定感があるのだが、それはある意味、劇場版ならではの派手さは無くテレビスペシャルでも良さそうな内容でもあると言える。

そのため、「シティーハンターがスクリーンでド派手に大活躍!ドッカンドッカン派手なのを期待してるぜー!」という人からすると正直物足りなさはあるのかもしれない。

しかしそんな安定感のある、どこか見覚えのあるストーリーを2019年のいま劇場で観るからこそ、現代にシティーハンターが復活したんだという言い知れぬ感動がじわじわと湧いてくるのではないだろうか。

 

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獠が愛する新宿の美しい夜景がこれまた良いんだ…!

 

ただの『アニメの映画化』ではなく、『伝説のアニメが20年の時を経てスクリーンに帰ってきた』という付加価値があるからこそ、本作のストーリーはこれでいいし、むしろこれがいいと思えた。

このあたりの意見は人によって違うだろうし、賛否両論もあるだろうとは思うが、シティーハンターってこうだよね!という感覚を持っている人ほど本作に対する満足度は高いのではないだろうか。

 

古さのなかに新しさが交わる不思議な心地よさ

さて、しつこいようだが本作を観るうえで重要なポイントなのは「20年ぶりにシティーハンターが復活した」ということ。

20年前と言えばインターネットの黎明期であり、当然ながらスマートフォンなんてものは存在していない。そのため駅で待ち合わせをしたり伝言を残すのも一苦労で、今でこそスマホアプリでいとも簡単に連絡ができるが、当時はまだ駅の一部に掲示板というミニサイズの黒板のようなものがあり、そこに日付とメッセージを書き込んだりしていた。(ちなみに駅の伝言板は携帯電話の普及などにより1996年頃に撤去が相次いだ)

これが冒頭に亜衣がスマホアプリで新宿駅の壁に疑似的な伝言板を投影したあのシーンと繋がってくるのだが、伝言板に暗号を書き込むことでシティーハンターに依頼ができるという噂を、伝言板が無くなってしまった今でも形を変えて引き継ぐあたりに時代の移り変わりが感じられて実に情緒的ではないか。

その他にも獠が女子更衣室を覗こうとする際に使われる(というか悪用される)のは小型のドローンだし、悪の組織が使うのもやっぱり殺戮マシーンと化したドローン。そして海坊主と美樹が店主をしている喫茶店『キャッツアイ』には海小坊主なるAI搭載ロボが導入されるなど、シティーハンターの世界観はそのままに現代のテクノロジーがしっかりと反映されていたのは感心した。そして海小坊主がメッチャ良い子で可愛かった。

 

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ドローンならぬエローンのフライトを阻止する香がキレッキレ

 

この古さと新しさの融合と言うのは戦闘シーンでも見られ、例えば海坊主がロケットランチャーで追手のドローンをひっくり返した際に「ガッハッハ!メカはひっくり返ったら起き上がれまい!」と勝ち誇るのだが、しっかりと最新型のドローンは起き上がってくるし、続いて公園の池に落とした際も「メカは昔から水に弱いと相場が決まっている!」と勝ち誇るも、何事も無かったかのように水からドローンが出てきてしっかりフラグを回収するといった、海坊主のメカに対する知識の古さがこれまたエモいのなんの…。これじゃあまるであのときの海坊主がそのまま20年の時を経て現代に復活したかのようじゃないか。これってもしかしてSFの要素もあったの?

 

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今作では何かと可愛さが目立った海坊主

 

また、ギャグシーンでも当時のノリのままに場面ごとに書かれている文字が変わる香のハンマーや、キャラがボケた際の昔懐かしいとぼけた演出(カラスがアホー言いながら頭の後ろを飛んでるやつね)、 そして至る場面で流れるシティーハンターの名曲の数々と、この良くも悪くも古臭い雰囲気はきっと当時を知っているファンであれば眉唾物なんじゃないだろうか。もちろん、当時のノリを知っていなくとも「これがシティーハンターのノリなのね」と噛み砕ける程度に抑えてくれているため、私のようなにわかでも問題なく楽しめた。

最新のテクノロジーを駆使した敵と戦っているなかで流れる劇中歌が、決して最新とは言えない懐メロの雰囲気を漂わせているというなんとも言えないアンバランスさも面白かったし、純粋にキャッツアイのOP曲なんかは流れるタイミングがバッチリでもう最高だった。

ちなみに新しさという意味では、冒頭のメチャクチャかっこいいカーチェイスの際に敵が打ったロケットランチャーを獠が撃ち落とした際に起こった爆炎がまるでゴジラが吐いているように見えるとか、獠と香が自宅でやたらとプレミアムモルツを飲んでいたりとか、新宿のJKがそのまんまモンストをプレイしていたりと、スポンサー企業のステマ(むしろダイマ)もしっかり2019年バージョンになっていて笑った。

 

シティーハンターを知っているなら観るべき傑作

ということで本作は往年のファンのみならず、シティーハンターのことをほとんど知らない人でも楽しめるようになっていて、わずか95分の間にシティーハンターの魅力がギュッと詰まった傑作でした。

以下、もっと書きたいけれどこれを全て文章にしちゃうとここから更に5000字くらい増えそうなので書くのをやめたネタを箇条書きしていくコーナー。

 

・冴子の自分のメリットが最大になるように立ち回るおいしい役どころもアニメ通りでニヤニヤできたし、公安の下山田が思った以上に賑やかし要員だった。

・今回の海坊主はコメディ担当だったのかな。ゴリマッチョな敵との肉弾戦はカッコよかったけどね。

・大型ドローンとの決戦のシーンの獠がカッコよすぎて脳汁がジャバジャバだった。

・期待していた「止めて、引く」が劇場で見れただけでもうゾックゾクした。

・最後に獠が言う名台詞はあえてネタバレしません。これは是非、劇場で実際に聞いてほしい。

・最後の最後にルパン三世のサインがチラ見えするサービスは遊び心があってGOODでした。

・いろいろとツッコミどころはあるのだが基本的には古き良き「こまけぇこたぁいいんだよ! 」感でなんとでもなる。

・感動的なシーンやカッコよくキマった場面でもすぐコメディ路線に持ってくという締りきらない美学みたいなのは独特よね。

・ED用に編集されたテレビシリーズの総集編映像も一見の価値あり。

・獠が街の人々に愛されている描写がたくさんあったのは?の人間性を表す意味ですごく良かった

・最後の最後に伝言板が復活したけど…これはもしかして続編の示唆…!?

・せっかくカッコよかったのに「モッコリ♡」で台無しにする精神。(さすがに股間モッコリのシーンは自重したみたいだけど)

 

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ルパンVSコナンなみの贅沢なコラボだよねぇ

 

うむ、ざっとこんなところでしょうか。

このなかでも特に良かったのはやっぱり完璧なエンディングの入り方かなぁ。

もちろんシティーハンターを語るうえで欠かせない「止めて、引く」があることは期待していたけれど、変に劇場版っぽくアレンジとかもしないでファンが見たかったアレをそのまま復活させてくれるあたり、制作スタッフは分かってる。

あのイントロが流れた瞬間あまりの気持ちよさにゾクゾクっとして、パーフェクトなエンディングまでの流れで感動して泣きそうになったもん。マジでGET WILDを聴きに行くためだけに映画を観に行ってもいいレベル。ホント最高でした。

それに新宿の伝言板が復活したくだりも、監督やオリジナルキャストを務めたレジェンド声優たちが劇場公開記念イベントで続編を匂わせるような発言をしていたこともあり個人的には期待が膨らむところですな。

 

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この超絶かっこいい獠は是非とも劇場で!

 

ちなみにネット上の感想を見ているとなかには「往年のファン向けの映画である」という意見もあるようだけど、私のような再放送を子どものころにチラホラと見たことがあるくらいのにわかファンでも劇中歌で流れる名曲の数々に痺れ、スクリーンを縦横無尽に動き回るキャラクターたちにワクワクし、キメるとこはキチッとキメる冴羽リョウのカッコよさにハートを打ち抜かれたので何の心配もないです。

それに私が行った劇場では1日5回の公演だったのだが、席は前日にWEB予約をした時点でどの回も6割ぐらい席が埋まっている状況で、当時のファンがパパやママになって子どもと一緒に観に来ているというのは想定内だったが、予想以上に10代~20代前半の若者も男女問わず観に来ていたので、決して「ファン以外はお断り!」なんてこともないようでした。

ということで少しでも本作が気になっているという人は是非、20年越しに復活したシティーハンターをスクリーンで楽しんでみてはいかがでしょうか。それでは。