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【映画レビュー】みんなで笑える『翔んで埼玉』はデトックス効果高めです【ちょっとネタバレ】

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出典:映画『翔んで埼玉』公式サイト

 

劇場予告で流れていた悪ふざけ満載な映像の時点ですでにもう面白くて、これもしかして予告だけ面白そうに見えて内容はショボいパターンなんじゃ…と少しばかり心配もしていたけれど、そんな心配は一切いらないほどに全編通してずーーっとふざけっぱなしの傑作でした。

正直、ストーリーそのものに中身はほぼないので端的に言うなれば「とにかく観てくれ!そして笑ってくれ!」の一言で済んでしまうのだけれど、せっかくなのでもう少し詳細に感想を述べていきたいと思います。

 

内容などない!頭カラッポでただ笑えばいい!

物語は真夏のうだるような暑さの埼玉県某所から始まる。

結納当日に会場へ向かう菅原愛海(島崎遥香)と愛海の父(ブラザートム)と母(麻生久美子)が車内でFM NACK5ラジオを聴いていると、「埼玉県の都市伝説」として過去に埼玉県民が東京都民から迫害を受けていたという物語が流れてくる。

埼玉県で暮らす人々は「埼玉県人」と呼ばれ、荒れ果てた土地で貧しい生活を余儀なくされていた。

埼玉県人が極貧生活から抜け出すためには東京都に入国(?)するのが最も手っ取り早いのだが、東京に入るためには入国手形を手に入れる必要があり、例えやっとの思いで東京に入れたとしても埼玉県人に人権などは一切なく、無断入国しようものならすぐさま国外追放されてしまうのであった。

 

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この時代が交錯しているような不思議な風景が面白い

 

一方、場面は変わり舞台は華やかな衣装を身にまとった人々と煌びやかな建物が立ち並ぶ東京都には白鵬堂学院という名門校に移る。

白鵬堂学院の生徒会長を務めており、東京都知事の息子である壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は将来の東京都知事を有望視されている超一流のエリートなのだが、そんなある日、百美の前に麻実麗(GACKT)というアメリカ帰りの美青年が現れる。

麗の都会度指数の高さとそのカリスマ性に嫉妬した百美はなんとかして麗を負かしてやろうと画策するが、すべてにおいて麗に完敗してしまい自信を喪失する。

すっかり落ち込んだ様子の百美を見かねた麗はふと彼の唇にキスをするのだが、そのキスがきっかけで百美は麗に強い恋心を抱くことに。

 

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この瞬間の二階堂ふみ、すげぇ顔してんな

 

しかし、ある日、百美が誘った遊園地で麗が不法入国した埼玉県人を助けたことにより、麗が埼玉県人であったことを知ってしまう。

そんな衝撃の事実に動揺を隠せない百美であったが、麗に対する恋心を胸に彼と共に埼玉県へ向かうのであった…。

というのが本作のおおまかなあらすじなのだが、もうこのあらすじを読んでもらった時点でこの映画がいかにぶっ飛んでいるかが分かってもらえるかと思う。

 

このぶっ飛んだ内容の原作は『パタリロ!』の作者である魔夜峰央が1986年に発売したものであり、2015年には『この漫画がすごい!』にも選ばれリメイクされるほどの大人気マンガ。

このマンガを実写化したものに、映画オリジナルとなる現代劇を絡めて映像化したものが現在公開中のものになり、監督は実写版の『のだめカンタービレ』シリーズや『テルマエロマエ』シリーズで知られ、マンガの実写化には定評のある武内英樹氏。

ということでいろいろと期待しながら劇場に足を運んだのだけれども、いざ本編が始まってみると、開始間もなく原作者がマンガを描いている風景にあわせて「この作品はフィクションです」と大々的に断りを入れる開幕の時点ですでに劇場内では笑い声が聞こえているという上々のスタート。

 

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埼玉県人にはそこらの草でも食わせておけっ!

 

その後も勢いは劣らず、畳みかけるように埼玉をディスりまくる本作。

麗が「一緒にいくか…!所沢へ…!」と言えば百美が「とっ、ととと…!?ところ…ざわっ…!?」と失神しそうになるし、場面が変わって現代劇になっても愛海が「熊谷は暑いだけ」だの「目ぼしい名産品がない」だの「全国一の貧乳県(ちなみに全国で唯一、県民の平均バストがAカップ)」だのとまぁ埼玉県をディスりまくる。ていうかぱるるに自分の胸元を見つめながら「貧乳」とか言わせるんじゃないよw

その他にも海なし県という最大の特徴ももちろんイジられてて、劇中で埼玉県人は海を引き込むために千葉方面に向かってトンネルを掘り進めていたというバカっぷりを見せる。

こんな具合に埼玉県は有名な埼玉あるあるを元に散々ディスられていくのだが、それと同じく周辺の千葉や北関東なんかも同じようにディスられまくる。

 例えば、埼玉と同じく手形制度を廃止し自分たちを認めさせようとする千葉開放戦線に麗と百美が捕まった際には拷問と称して穴という穴にピーナッツを詰められるとか、群馬は未開の地という設定でプテラノドンが飛び、古代遺跡が点在し、原住民が暮らしているというカオスっぷり。

 

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未開の地、群馬県

 

埼玉ばかりがバカにされるのかと思いきや、東京周辺がまとめて標的になるのは予想外で面白かったなぁ。

ちなみに東京のなかでも青山や白金といった一等地は最上級であるA組に分類され豪華絢爛な装飾に囲まれているのだが、八王子などを始めとするいわゆる下町は下級のE組に分類されていて平凡な環境になっていて、元埼玉県人と呼ばれる人々に至ってはZ組に分類され、まるで奴隷のような環境で強制労働を強いられていたりと、サラッと東京都自身のディスりも入っていて、これがまた思わず「わかるわかるw」と頷いてしまうような絶妙な内容のため、関東圏に住んでいる人は誰しもが思わずクスッとしてしまうのではないだろうか。

個人的に大好きだったのは埼玉 VS 千葉の有名人出身地対決で、X JAPANのYOSHIKIやTHE ALFEEの高見沢といったビッグネームの応酬のあとに手持ちのカードがなくなってきた千葉陣営が苦肉の策で繰り出した「小島よしお」「小倉優子」というカードに対して阿久津(伊勢谷友介)が「弱いっ!」と嘆くシーンで大爆笑しました。

 

出身有名人合戦は動画の最後にちょこっとだけ出てくる

 

豪華キャスト陣のぶっ飛んだ演技は見もの

さて、前述したように本作はだいぶブッ飛んだ内容のコメディ映画なわけだが、個性の強いキャラクターたちを演じるキャスト陣のこれまたブッ飛んだ演技にも要注目である。

例えば百美を演じた二階堂ふみは美少年とも美少女とも取れる絶妙なルックスで、最後の最後まで「実はわたし、女の子なの♡」というくだりがあるんじゃないかと思っていたけれど、結局最後の最後まで百美は男だった。

実は打ち合わせの段階で百美の設定を女性に変更する案も出ていたらしいが、脚本を読んだ二階堂ふみ自身が男役をそのまま演じたほうが面白いと提案したことで原作通りのキャラクターが再現されることになったのだとか。

 

また、麗を演じるGACKTもすっかり変わり者のアーティストや筋トレマシーン、格付けチェックオジサンといったイメージを払拭して怖いくらいにマンガのキャラクターそのものになりきっていた。

そしてこれがまたあんまりにも似合うもんだから、本編を観終わったあとには麗を演じるのはGACKT以外考えられなくなってるのよね。というかもはやマンガの麗はGACKTをモデルにしたんじゃないかとさえ思えてくる。マジでキャスティングが完璧。(ちなみに本編ではしっかり格付けチェックのパロディが盛り込まれている)

 

そのほかにも麗が千葉開放戦線に拷問されるシーン(百美の夢ではあるが)では、伊勢谷友介に鼻の穴にピーナッツを詰められそうになっているGACKTがやたらと「あぁん♡おぉん♡」と低音ボイスで喘ぐもんだから実にホモホモしい迷シーンもあったし、その後の伊勢谷友介とガクトの濃厚なキスのシーンでは今までゲラゲラと笑っていた劇場全体が思わず息を呑んだのは最高に面白かった。

 

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もう頭のなかにはこの画像しか出てこなかったよ


また、映画オリジナルの菅原家も良い味を出していて、ブラザートムと麻生久美子の夫婦の掛け合いが妙に心地よかったり、ぱるるが終始ツッコミ役を担ってくれているおかげで視聴者がおいてけぼりにならないようになっていたりと、過去パートが暴走しすぎるのを抑制する意味では、現代パートはかなりアクセントになっていたんじゃないだろうか。

ということで、ここまで豪華俳優陣が本気で悪ふざけしている映画はなかなかお目にかかれないんじゃないだろうか。しかも竹中直人がチョイ役で出てきたり、数多くの芸能人がほんの一瞬のシーンのために出てきたりなど芸能人の使い方も無駄に豪華でやたら金がかかってそうなのも余計に笑える。

 

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いいアクセントになっている現代パートの菅原家

 

京本政樹がフガフガ言っててセリフが聞き取りにくかった(中尾彬や麿赤兒はキャラも相まってフガフガ言ってても違和感なかった)りと少し気になる場面はあったりはしたけど、とにかくお祭りのように賑やかな映像を観に行くだけでも1800円を払う価値は十分にあると思う。

ちなみに、ぱるる、成田凌、益若つばさは埼玉出身で、麻生久美子は千葉出身であるため、もしかしたらは演技のなかには多少なりとも素の表情が混ざっていたのかも…?(ちなみにGACKTと二階堂ふみは沖縄県出身)

 

まさしく邦画史上最大の茶番劇でした

てなわけで、本作は期待していた以上にふざけ倒してくれて最高に笑えた邦画史上最大の茶番劇でした。

プロモーションの一環で映画公開前に埼玉県知事に謝りに行った時点で「これは本気で悪ふざけしに行ってんな」と思ったけれど、本編の内容はその想像を遥かに超えるほどのカオス。

埼玉あるある、千葉あるあるで構成された内容は関東圏在住の人たちには大ウケだろうし、油断してころに突如としてディスられまくる群馬、栃木、茨城といった北関東在住の人たち、そして自分たちは大丈夫だろうと高をくくっていた東京都民までもが餌食になる本作は関東圏にお住いの方々は絶対に観に行くべき傑作でした。

 

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ナイスキャラな千葉解放戦線のリーダー阿久津

 

また、本作はエンドロールまで楽しく最後の最後まで余すことなく映画を楽しめるのが実に素晴らしい。

本作のテーマソングでありエンドロールに流れる『埼玉県のうた』は、はなわが2003年に発表したアルバム『HANAWA ROCK』の収録曲である『埼玉県』を再録したもので、伴奏が華やかになったのと歌詞が多少マイルドになっているのだが、これがまた疾走感のあるメロディーとはなわの十八番であるディスり歌詞が妙にクセになるんだよなぁ。これは邦画ならではのエンドロールの短さも相まってナイスな演出でした。

なお、エンドロールでは、はなわが「郷土愛もない~♪」と歌っていたが、きっとこういうディスりディスられも全部ひっくるめて笑って楽しめるくらい、埼玉県民は郷土愛に満ちているんじゃないかな。

ということで、頭カラッポにして思いっきり笑いたいという関東圏在住の人は必ず劇場まで観に行くように!それでは!(※もちろん関東圏以外の人も笑えますので是非)