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【映画レビュー】カッコいいキムタクと凛々しい長澤まさみを観るなら『マスカレード・ホテル』で決まり【ちょっとだけネタバレあり】

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出典:映画『マスカレード・ホテル』公式サイト

 

世間一般の感想として「キムタクって何を演じてもキムタク」って揶揄されること多いじゃないですか。

でもそれって物凄いことだと思っていて、デビューから数十年経った今もずっと変わらずカッコいいまま、ファンの憧れのアイドル像を徹底して演じきる木村拓哉という人のスター性が半端なくないですか?

俳優なんかだと歳をとって経験値があがると、良い意味で「味が出た」とか「貫禄が付いた」なんて例えられることが多いと思うんですけど、歳を取ってもみんなから「アイドルだ」と言われる有名人って本当にごくわずかじゃないでしょうか。

そんなスーパースター・キムタクと、最近ますます演技の幅が増えてきた長澤まさみが主演する『マスカレード・ホテル』がすっげぇ面白かったんで、熱量高めに感想を述べていきたいと思います。

ちなみに、以下の感想にはちょっとだけネタバレが含まれるので、新鮮な気持ちで本作を楽しみたい方は映画を観終わった後にまた遊びに来てください。

それでは、どうぞよろしく。

 

秀逸なシナリオと退屈しない仕掛けたっぷり

まずは予告映像をどうぞ

 

本作は東野圭吾の小説のなかでも人気シリーズである『マスカレード』シリーズの1作目が映像化されたもので、舞台は連続殺人犯が次の犯行予告として指定したとある一流ホテル。

そこで連続殺人事件を追ってホテルに潜入捜査をする刑事(木村拓哉)と、その一流ホテルに勤める優秀なフロントクラーク(長澤まさみ)がバディを組み、連続殺人事件の真相に迫っていくというストーリーなのだが、この人を疑うことを生業とする刑事と、人を信じることを信条とするホテリアという立場も性格もチグハグな2人がどのように事件の真相に迫っていくのかというのが、この物語のキモとなり面白いところである。

 

本作のタイトルでもある「マスカレード」とは仮面舞踏会・仮装という意味の言葉で、劇中でも長澤まさみ演じる山岸が「ホテルに来られるお客様は、みんな普段の日常とは切り離された時間を楽しむために仮面を被っている」という趣旨のことを言っており、人を疑うことでその仮面を剥がして本性を暴こうとする新田(木村拓哉)と序盤は対立することになる。

この『仮面を被っている』という印象的なキーワードに沿うように、まるで短編集を観ているかのようにホテルに訪れる人たちの様々な人間模様がテンポ良く描かれるため、ずっと退屈することなく物語に集中できたなぁと思う。

 

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この凸凹コンビ感がこれまた痛快なんだ

 

また、数多く登場する人物たちのセリフ1つ1つにきちんと意味があって、それが今後の展開を左右する重要な伏線になっていたり、事件解決のための重要なヒントになっているため「あっ、なるほど!」と思う場面が多く、2時間ずっと面白かったし秀逸な会話劇がとにかく気持ちよかった。

ということで、アイツが犯人か?それともコイツが怪しいか?と勘繰りながら登場人物たちの言動に注目しつつ、どのセリフやどんな行動が事件解決のヒントになるのかをキムタクと一緒に考えながら物語を追っていける楽しさがある映画だった。

 

豪華な出演陣の惹き込まれる演技に魅了される

記事のタイトルでも述べたように、この映画をオススメするうえで推したいポイントなのは、キムタクのカッコよさと長澤まさみの凛々しさが存分に堪能できるという点。

まず新田については、最初はぶっきらぼうでホテルに潜入捜査なんぞクソくらえといった態度が如何にもな感じ(ドラマでよく見る横柄な刑事)で「おぉ、キムタクこういう役似合うよなぁw」とニヤニヤできるキャラだったのだが、全てのホテル利用客に対して真摯に向き合う山岸の姿を見て、徐々に敬意を抱いていく、ホテルマンとしての心得を大事にしていくという心情や行動の変化が、これまたHEROの久利生検事を彷彿とさせる爽やかイケメンになっていてやっぱりニヤニヤしてしまった。

あと、キムタクが何かに気付いてハッとした顔をしたあとに全速力で走り出すっていうあの『キムタク走り(勝手に命名)』の演技ほんと好き。いろんなドラマや映画であのキムタク走りするけど、何度見てもいいよなぁ。

 

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冒頭の男くさい刑事モードのキムタクもいいよねぇ


また、長澤まさみについても、スタッフ一同から一目置かれる山岸という優秀なフロントクロークを演じていて、普段は冷静沈着で模範的なフロントクラークであるように描かれているのだけれど、ひとたびテンパりだすと途端にボロが出るというのも実に人間臭くて可愛かった。

それに「ホテルで事件が起こるのは困る」と序盤はあまり協力姿勢ではなかった山岸が新田に徐々に心を開いていき、素人なりに事件の真相について推察したり、純粋な疑問を口にすることで新田に新たな気付きが生まれるというのもあり、それを見ていた能勢の「今の相棒は山岸さん」というセリフにも重みが出て良かったなぁ。


あとは脇役たちも個性派俳優揃いで、例えば生瀬勝久はとにかくああいう憎まれ役を演じるのが上手くて、演技だと分かっていても過去の接客業の経験から似たようあクレーマーのことを思い出してしっかりイライラできた。(でもこれが新田がホテルマンとしてまた一段階成長できたと共に人の心の痛みに気付くことができたキッカケになっていたのが良かったなぁ)

あとはキムタクと松たか子のHEROコンビが見れて幸せだったし、小日向文世さん(小日向さんはなぜか「さん」付けしたくなる)はホントにああいうキャラ似合うよなぁ…。穏やかで、優しくて、隙だらけのように見えて、でも実はキレモノの敏腕刑事みたいな役がね。素敵だった。

 

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また小日向さん演じる能勢さんがいい人なんだよ…


一方、人間の闇と言うか嫌なところも随所に見られるのが本作の特徴でもあって、例えば山岸は超有能なんだけど、殺人犯をギリギリまで泳がせてホテルのなかで捕まえようとする警察たちの動きを知って、殺人犯の予告をホテル全体に公表しようとするのだが、そのときの言動が「ホテルのなかで殺人が起きては困る(=ホテルの外で何が起きても知らないが)」と言っているようにしか聞こえないのだ。

そして新田の説得の末に1日だけ公表を待つのだが、実は殺人犯の計画はホテルの総支配人など一部の役職者も知っていて、事件解決後に「真実を公表したところで余計な混乱を生むだけだから黙っていた」と知らされたときに「私だけ力が入っててバカみたいだ」と力が抜けるシーンがある。

こういう言動からは山岸の自意識過剰っぽいところであったり、ホテルのためというよりも自分自身の責任感の強さに陶酔していそうなナチュラルクズっぽい部分もほんの少し見えるのが、皮肉が効いていて痛快でもあったりする。

 

また、犯人がわざわざ暗号を残す理由についても「わざわざ暗号を残して自分から難易度を上げたのはなぜか」という当然の疑問が劇中で語られていたが、トリックとして完璧(美しさ)を求めた犯人のこだわりであると結論付けられ、最終的には「頭が良すぎるのも考え物だ」と皮肉交じりに言われていたが、このシーンも巧みなトリックを構築した自分自身に酔っていた犯人の慢心を描き、「機械のような完璧な人間などいない」というメッセージが感じられてなんとも味わい深かったなぁと思った。

 

ということで登場人物たち1人1人について語っていくと1万文字どころじゃ済まなくなるんで、十人十色の人間模様は是非劇場でご自身の目で確認してほしい。

ちなみに本作は前田敦子と勝地涼が夫婦で共演を果たしているが、撮影時はまだ夫婦関係ではなかったらしいですぜ。

 

まぁ、ツッコミどころも無くはないけれど…

とは言え、まぁツッコミどころいくつかあるにはあるわけで。

例えば、新田がずっと怪しんでいる殺人事件の容疑者に対する捜査が甘すぎる件。え?そんなこともまだ調べてなかったの?という場面が何度かある。

こればっかりはホテルマンとして成長していく過程で気付いたことが本業の刑事としての捜査にも役立つという面白さを描くために多少は仕方がないとは言え、ミステリーファンからすればズッコケ待った無しの凡ミスなのでは…。

それにずっと一件目の殺人事件の容疑者にこだわっている割には、次から次へとホテルに現れる怪しい人物に翻弄されてドタバタするのも芯がブレブレだなぁ…とか思うところはいくつかある。

最も、後半は犯人を追い詰めるというよりは山岸を脅威から守るために駆け回っている新田の姿がとても印象的なので、観ている側も一件目の事件の容疑者のことなんかはどうでもよくなってくるのだけれど。

 

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対策本部(笑)の皆様 ※(笑)の意味は本編を見れば分かります

 

また、致命的だったのは極秘の潜入捜査なのに、普通に客やホテルの従業員がいる屋上や室内でも事件の核心に迫るような大事な話もしていたという点。

あれだけ殺人事件の次のターゲットになっていることは公表しないでくれと頼みこんでいた新田が、多くの人がいる屋上やどこで聞かれてるかも分からない挙式会場などでベラベラと事件について話し込んでいて、これ大丈夫なの?と突っ込まざるを得ないシーンが多々あった。

それにロビーとかでも大きめのボリュームで能勢のことを刑事仲間として紹介していて、あれ絶対ロビーにいる人たちに聞こえてただろと。もし万が一にでも犯人に聞かれてたら公表もクソもねぇぞと。そのあたりはもうちょっとリアリティを追求して欲しかったなぁ…。

あと犯人はキャストからして分かりやすかったのが少々残念ではあったかなと…。だってキムタk(自主規制)

 

とまぁ上記の通り、原作の内容がいくつか改編されていることなども考慮すると、2時間枠に収めるために出来るだけ描写なども削って内容をスリムにせざるを得なかったんだろうけど、純粋にミステリーものとして楽しむのであれば原作小説を読むのがいいのかもしれない。

映画はどちらかと言うと、連続殺人事件という軸に沿って様々なヒューマンドラマが描かれる様子を楽しむ作品になっていたのかと思う。

 

正月映画らしいお祭り感満載の傑作

結論としては、本作は殺人事件を解き明かすミステリー要素と、ホテルの利用者たちの様々な人間模様を描くヒューマンドラマの要素が匠に交差していて、とてもテンポの良い良作だったと思う。

 表側は綺麗で華やかなホテルも裏側は人が右往左往するという、あのごった返し感も知ることができて面白かったし。

また、ホテルのロゴが入ったペーパーウェイトが何度も意味深に映るとか、登場人物の伏線になりそうなセリフが頭に残っているうちに早めに回収されるのはミステリー初心者でも気負わず楽しめる親切設計だったのかなと思う。(一方、ガチガチの映画ファンからするといささかチープに感じられる部分もあるとは思うけれど…)

ということで、豪華キャスト陣によるお祭り感が気になる方は是非、劇場へ足を運ばれてはいかがだろうか。