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【映画レビュー】離れていてもズッ友だよ!『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観てきた【ネタバレあり】

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 出典:シュガー・ラッシュ:オンライン|映画|ディズニー公式

 

ゲームや映画のキャラが作品の垣根を越えて夢の共演!なシュガーラッシュの続編である『シュガー・ラッシュ:オンライン』を観てきました。

とりあえず1つ言えることは……

 

これ続編作る気満々だろ?

 

では、以下感想です。

 

インターネットのなかはこんなにも愉快

古びたゲームセンターのなかでドタバタ劇を見せたシュガー・ラッシュの続編である本作は、今度は舞台をインターネットに移して前作同様に目が離せないほどのドタバタ劇を見せてくれた。

前作のシュガー・ラッシュから6年後の世界を描いている本作はラルフとヴァネロペが現状に抱くそれぞれの想いを吐露するところから物語が始まる。

 

2人はゲームセンターの閉店後に毎晩、別のゲームに遊びに行っては朝まで語り合い、ゲームセンターが開店すれば自分の仕事(ゲームのキャラクターとしてプレイヤーを楽しませること)に戻るという代り映えしない日々を送っていた。

そんなある日、退屈な毎日に刺激を欲したヴァネロペはプレイヤーの意思を無視して自分勝手にハンドル操作をしてしまい、それに驚いたプレイヤーと争ううちにシュガー・ラッシュのゲームを操作するハンドルが壊れてしまう。

シュガー・ラッシュを直そうにもメーカーは既に倒産しており、修理部品をネットで購入しようにも貴重価値がついており、とてもじゃないが寂れたゲームセンターの店主がパッと払える金額ではなかった。

そんな折、店主が『Wi-fi』なる新たなシステムを導入するのだが、それがインターネットへの入り口であることを知ったラルフとヴァネロペは自分たちでシュガー・ラッシュを修理するためのハンドルを取りに行こうと決意し、インターネットの世界へ足を踏み入れる…というのが大まかなあらすじ。

 

このインターネットの世界に電脳世界の住人が自分の意思で飛び込むという設定が実に面白い。

人間がPCでネットを楽しんでいる様子はあえて無機質なアバターが指示のままに動いている様を描き、カクカク動くアバターたちと自分たちの意思で好き勝手に動くラルフとヴァネロペ、およびオンラインゲームのなかのキャラクターたちの対比がとても面白い表現で、インターネットの世界には楽天やフェイスブックのロゴがあったり、GoogleやAmazonのロゴが入った巨大なビルがあるなど、私たちの身近な企業が実名で登場しているのも親近感が湧いた。

特にTwitterでユーザーがツイートしている(あれはおそらくRTされまくっていたんだろうな)様子を青い小鳥たちがピヨピヨ鳴いている様に見せたのは可愛すぎて1匹持って帰りたくなるほどだった。

 

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ネットオークション会場に忍び込む2人

 

このほかにも「あぁ~インターネットだねぇ~」と唸りたくなる部分がたくさんあって、Webページを見ているときに出てくる鬱陶しいポップアップ広告は広告を手に持ってキャッチ勧誘してくる人々として表現されていて、面白おかしくだけど適度にウザい様子に思わず笑ってしまったし、スパムをもじったキャラクターである『スパムリー』が屈強なガードマンに跳ね返された際には「くそう、ポップアップブロッカーめ…」と言っていて、ブロッカーまでが擬人化されていたのはお見事だった。

また、検索バー(きっとBARとかけているのかも?)の主であるノウズモアに聞きたいことを尋ねる場面では、頭文字を口にした途端に食い気味に検索候補を「あれ!?」「これ!?」と出してくるのがまさに予測候補がズラッと出てくるあの様で、ネットあるあるが見事に表現されていた。

 

もちろん、ネット上の嫌なところも皮肉っぽく的確に表現されていて、とある理由からバズチューブという架空の動画共有サイトでラルフが人気の動画を片っ端から真似して続々と動画を投稿していくのだが、その人気動画というのがYoutubeで本当によく見る有象無象の数々であったり、それをバズチューブの運営者でありアルゴリズムの全てを司るイエスというキャラの指示のもと「あなたへのおすすめ!」とゴリ押しで視聴者を稼ぐ様子も、悪い意味で見事に表現されていたなとw

 

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イエスは優秀な運営者なんだぜ

 

そしてそれを思考停止で言われるがままにバズチューブに誘導されてしまうアバター(=PCを使っている人間たち)の呆気なさもネットに依存している私たちを痛烈に皮肉っていたなぁと感心してしまった。

コメント欄で好き勝手にラルフの誹謗中傷を書き込みまくっているユーザーたち、それを見て心底ショックを受けてしまうラルフ、それを見てコメント欄は人間の悪意が出ていることが多々あるので見ないほうがいいと達観した様子で話すイエス、それぞれ全てに既視感があった(あのシーンにネット上の誹謗中傷の縮図がギュッと詰まっていた)のも考えさせられるものがあったなぁと思う。

 

ディズニープリンセスたちのメタメタしい会話が最高

そんななか、ヴァネロペが上記のバズチューブでのラルフの動画を宣伝するために向かったのはデイズニーの公式ファンサイトである『オーマイディズニー』。

そこでディズニーファンのあまりの多さに驚愕するヴァネロペの気持ちも「あぁ…わかるわぁ…」となりつつ、やはりピクサー、MARVEL、スター・ウォーズとディズニー傘下の大人気キャラたちが一同に会する豪華さには目を奪われる。

これはディズニーがルーカスフィルムとMARVELスタジオを買収しているからこそ出来る芸当なのだが、まさかディズニーという会社のデカさを映画の中でこれほどまでにポップな表現で思い知らされることになるとは思いもしなかったw

あそこは映画好きからすれば、まさに夢の国だったなぁと。(昨年亡くなったスタン・リーのアバターが登場するのは粋な演出だったぜ…!)

 

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今回はソニックも喋るぞ!

 

とまぁ、そんな夢の国で勝手に宣伝活動をしていたヴァネロペは警備員であるストームトルーパーに追いかけられてしまうのだが、追手から逃れるために飛び込んだ部屋はなんと歴代のディズニープリンセスたちが大集合している控え室だった。

突然飛び込んできたヴァネロペに警戒態勢を取るプリンセスたちだったが、ヴァネロペに何者なのか質問していき最終的に「男性がいないと何もできないと思われている!?」という問いに対し、「そうなの!まさしくそう!」と鼻息荒く答えたヴァネロペを見て「ホンモノのプリンセスだわぁ♡」とキャッキャするディズニープリンセスたちが、ディズニー映画のヒロインたちの立ち位置をそのまま皮肉る内容になっていたのが最高に面白かった。

 

 

その後、ヴァネロペと打ち解けたプリンセスたちはヴァネロペの格好を真似てTシャツやジャージ姿でくつろぐという激レアな様子を見せてくれたり、自分の想いを急に歌いだすところをヴァネロペに突っ込まれるなど、本当に見どころ満載のシーンだった。これを宣伝ムービーとしてYoutubeにアップしたのは大正解だな。本当に面白いもん。

 

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夢の国の集合写真(本編とは関係ありません) 

 

この一連の流れはディズニー映画あるあるをディズニー自身が皮肉っているものであり、「プリンセス=可憐なドレス」という固定観念をブッ壊してくれるお見事な演出だったであると同時に、この出会いがヴァネロペが本当の自分の想いに気付いていくキッカケになるのも、実にスムーズに次の展開への橋渡しが出来ていて感心しっぱなしだった。

 

 

ちなみにヴァネロペがプリンセスたちと別れる際に金言(のようなもの)を貰うのだが、そこでメリダが言った言葉の意味がわからず「あれどういう意味?」とこっそりプリンセスたちに聞くヴァネロペに対し、「実は私たちもよく分からないの」「彼女だけ違うスタジオの子なの」と返すプリンセスたちが最高だった。(実はあのプリンセスたちのなかでメリダだけはピクサースタジオのヒロインなのだ…!)

また、緩い服装になったプリンセスたちのTシャツにはそれぞれのヒロインの特徴であるロゴ(シンデレラはカボチャの馬車、エルサは「JUST LET IT GO」の文字、白雪姫はポップ毒リンゴと「POISON」などなど…)が入っていたのも芸が細かくて良かったなって。

 

ラルフとヴァネロペそれぞれが抱く想い

前作のシュガー・ラッシュは悪役としての日々にうんざりしたラルフがヴァネロペとの出会いによって自身を見つめ直していくというストーリーで、ヴァネロペの正体なども含めてとても分かりやすい王道のファンタジーアドベンチャーだった。

一方、今作はラルフとヴァネロペそれぞれの信念と互いに抱く想いをより詳細に描いたヒューマンドラマをメインにした物語になっていた。

ヴァネロペはオンラインゲーム内で出会ったシャンクという美女との出会いによって前時代的なゲームセンターで一生を過ごすことに対するネガティブな思いが膨らみ、プリンセスたちとの出会いで自分自身の想いに正直に生きることを決める。

一方のラルフも代り映えしない日々さえあれば良いという想いから、徐々にヴァネロペが居てこその環境であること、ヴァネロペに依存しすぎてしまっている自分自身の弱さなどに気付いていく。

 

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シャンクはカッコイイお姉さん

 

このヴァネロペが自身とその周りの環境について見つめ直す展開が、前作のラルフが自分自身を見つめる部分と重なるところもいくつか見られたため、最終的にお互いの気持ちを打ち明け合って、すべて分かりあえたうえで更に友情を強固なものにする…というハッピーエンドに向かっていくものだとばかり思っていたために、インターネットという未知の世界で右往左往するうちに、そしてストーリーが進むほどに徐々にすれ違っていく2人と少しずつ露わになっていく不穏な様子を観るのがちょっとツラかったというのが正直な感想だった。

これはどちらが悪いとかどちらが間違っているかというわけではなく、2人の性格の違い・考え方の違いによるものなのだが、前作がかなり分かりやすいハッピーエンドだっただけに終盤に向かうにつれ不穏になっていく展開に少々萎えてしまったかなぁ…と。

 

それにしても今作の大騒動の原因となったウイルスの設定はなかなか上手かったなぁと思う。

侵入したプログラムの脆弱性を見つけ、それをコピーすることでクラッシュさせるという性質のウイルスが精神面が不安定になったヴァネロペとラルフに目をつけるという発想は実にお見事。

自分自身と周囲の環境を見つめ直している2人の心の揺れ動きを利用して物語を盛り上げるのは素直に感心したし、それを乗り越える(自分の弱さと向き合う)ことでラルフとヴァネロペがまた1つ成長できたという事実にも説得力が出たのかなと。

 

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食い気味になんでも教えてくれるノウズモア

 

とは言え、ストーリーを全体的にみると引っかかる部分もかなりあって…。

まず今作のヴァネロペは延々とわがままを言い続けている『わがままプリンセス』にしか見えなかったのがとても残念だった。

そもそもなぜこんなことになったのかと言うと、シュガー・ラッシュのプリンセスであり大人気キャラクターという自身のポジションを放棄し、新たな刺激を欲したヴァネロペのわがままが全ての元凶になっているわけで。

そんなヴァネロペを見かねてラルフが励ましてあげるわけだけど、それじゃあヴァネロペの機嫌はなおらず。仕方がないので少しコースに改良を加えてあげたら途端に調子に乗り出してプレイヤーの邪魔をした挙句、シュガー・ラッシュの存続が危ぶまれると分かるや否や、あんなに退屈な環境だの何だのとこき下ろしていたくせに「シュガーラッシュの世界を愛してた」だの「レーサーじゃないあたしって何?」だのと急にシュガー・ラッシュへの愛を語り始めるという情緒不安定さを見せる。

 

最終的にはラルフに向かって「友情だけじゃ満足した生活にはならない」と最低な一言を投げつけ、インターネット上でもずーーーーーーっと自己中心的な言動が目立った。

前作ではあれほどまでにシュガー・ラッシュのなかに自身の居場所を見出すことに一生懸命で頑張り続けた結果の納得のハッピーエンドだったのに、その前作の物語をいとも簡単に捨て去るプリンセスに正直ガッカリしてしまったのはきっと私だけじゃないはず。

最初から最後まで「私が!私が!」ばかりで、同じくシュガー・ラッシュに住む仲間たちやゲームセンターの仲間たちのことは何も考えていないのはちょっとどうなのかと…。そもそもシュガー・ラッシュの大人気キャラクターが選択できなくなったことでプレイヤーにも迷惑をかけているし、プレイされることが減ればそのぶんシュガー・ラッシュのなかのキャラクターたちにも迷惑をかけるし、それってやってること前作の諸悪の根源だった『ターボ』とやっていることは何ら変わらないのでは…?

 

今回のヴァネロペの一連の行動が「彼女が成長する過程を描いたハートフルな物語なんだ!」ということなのであれば、ターボのしていたことも「彼が自身の居場所を求めるための悲しいお話なんだ!」で正当化されてしまう気がするのだけれど、そのあたりどうなんでしょう?

もちろんラルフの嫉妬に狂った言動もゾワッとする瞬間はあったものの、そんなことも些細に感じるほど、とにかくヴァネロペの言動には終始、疑問符がついた。

2人の絆の証であるクッキ―のペンダントが割れそれが2人の関係が断絶されたことを表したと思ったら、今度はその割れたペンダントをそれぞれが大事に持って帰ることで離れていても一緒であることの証となるという、同じアイテムでもその意味合いが180度変わってくる演出がよく出来ていただけにヴァネロペがシュガー・ラッシュを去るまでの描写が雑だったのが残念で仕方ない。

 

続編に期待…というか続編で巻き返してくれ

ということで総括としては「続編に期待!(というかこれで終わったら台無しだぞ!)」というところだろうか。

そもそもシュガー・ラッシュを捨てたヴァネロペが主役になるんだとしたらタイトルも変えなきゃじゃ…?とも思うけれど、もしかしたら次回作ではインターネットで問題が起きて閉じ込められたヴァネロペをゲームセンターの仲間たちが助けに行くみたいな王道の大団円だったり…?

だとすればタイトルは『シュガー・ラッシュ:リターンズ』かしら。

 

ちなみに今作は子ども向けの映画ではないと思っている。現に隣に来ていた親子連れはお母さんは涙ぐんでいたけど子供はポカンとしてたし。

と言うのも、前作はとにかくお祭り感が強くてストーリーも分かりやすく王道のハッピーエンドだったため子どもたちでも楽しめる内容になっていたのだが、今作は心の機微な動きを捉えつつ、親友とはいえどこまで相手の心に踏み込めるかというナイーブな部分もテーマとして扱っているため、このあたりはおそらく小さい子からすると何のこっちゃという部分も多かったんじゃないかと思う。

一方、人生経験をある程度積んだ大人の場合はどこかしらで見た・感じたものを多く扱っている内容に納得する場面や共感する場面も多くあるだろうし、紆余曲折ありながら最終的に離れていても分かりあえるという2人の姿にジーンとくる人も多いのではないかと思う。

 

個人的にはストリートファイターⅡのザンギエフいじりが秀逸だった(胸毛ボーボーでだらしないように見えるけど実はすごくお手入れしてる説とか、実は高学歴で祖国を愛しているというキャラ設定をサラッと紹介するとか)のと、タッパーで飲んでいるときにルートビアがフィリックスの奢りで飲み放題になったことが分かったときに、喜んだリュウが「昇龍拳!」と叫んだのがツボだった。

ストーリーについては好き勝手に言いたい放題してしまったけれど、前作同様のお祭り感は楽しめる(むしろ前作以上のお祭り感がある)ので、作品の垣根を越えた豪華な競演を大画面で楽しみたいという人は是非とも劇場へ足を運んでみてはいかがだろうか。

それでは。