【映画レビュー】『アリー/スター誕生』は王道のラブコメ&胸熱のライブシーンを楽しもう【ネタバレあり】
某SNSにて『#ガガ泣き』のタグをつけて宣伝している本作。
劇場の予告編で観たとき最初に思ったのは、「お?今度はレディー・ガガの伝記ものか?」だったのだが、実際は過去に何度もリメイクされ続けてきた往年の名作の最新版なんだそうで。(1937年のウィリアム・A・ウェルマン監督の『スタア誕生』、1954年のジョージ・キューカー監督の『スタア誕生』、1976年のフランク・ピアソン監督の『スター誕生』に続く、4回目のリメイク)
そんな往年の名作がレディー・ガガ主演でどのようにアップデートされたのか、実際に観てきた感想です。
キャストの演技が凄すぎて伝記映画を観ているみたいだった
ついさっき「お?また伝記ものか?」なんておちょくったところだったのだけれど、実際に観てみるとガガ様とクーパー様の演技が凄すぎて(というか自然すぎて)、実在した人物の年表を辿っているような感覚だった。
ちなみにガガ様とダブル主演を務めたブラッドリー・クーパーは主演作の「アメリカンスナイパー」で一躍その名を世間に知らしめた俳優なのだが、実は本作では脚本と監督(しかも初挑戦)も務めており、なおかつ歌唱シーンではガガ様に負けず劣らずの歌唱力を発揮するというオールマイティさを如何なく発揮させているスゴイ人。
もともとビヨンセとクリントイーストウッド主演で構想が練られていたらしいのだが、そのどちらもが降板したことによりクリントイーストウッドと関わりの深いブラッドリー・クーパーに声がかかったんだそう。
んでもってビヨンセの代わりにレディー・ガガとはこれまた絶妙なとこをついてくるなぁ…と思っていたのだけれど、実はガガ様も演劇を少しかじっていたことがあるそうで、映画初主演とは思えないほどの見事な演技をしていた。
それこそ初めのうちは「うわぁ、思った以上にガガ様のまんまだwww」と思ったし、劇中で自身のルックスを卑下するセリフを吐いたときは「ガガ様が何言っとるんじゃい!ゴルァ!」とも思ったけど、物語が進んでいくうちに段々と違和感がなくなっていくんだなぁこれが。不思議なんだけれども。良い意味でガガ様感が無くなっていくというか。
戸惑っている様子だったり、大勢の前で怯えながら歌うときの震えた歌声とか、複雑な感情を抱えつつポロッとこぼす涙とか、マジでベテラン女優さながらの貫禄。すごかったなぁ。
ちなみにガガ様は自分が演じたアリーに感情移入しすぎて、映画を最後まで観れないのだそうな。
そしてその相棒であるブラッドリー・クーパーがまたいい味を出してるのよね。苦悩しつつも表向きは明るく、だけど世間を皮肉った感じだとか、ちょっと斜に構えてる感じとか、スレた演技がすげぇハマってるんすよ。
けど、ガガ様と出会った後の人間味を取り戻したような表情とか、ラストの展開の前の思うところがあるような表情とか、そういうのを観てるとだんだん『演技をしているガガ様とクーパー様』じゃなくて『アリーとジャクソンの史実』を紐解いているような感覚になってくるんですよ。マジで。
この幸せなシーンよ…
この感覚は是非、自分の目で確かめてほしいなぁ。
物語としては王道かつ分かりやすくてGOOD
物語としては非常にシンプルかつ王道で、自分に自信のないとある女性が落ち目のロックスターと出会うことで眠っていた才能を開花させ一躍、晴れやかな表舞台に立つことになる…というもの。
ここから更に男女の愛憎劇があったり、紆余曲折の末に…的な物語が展開していくわけなんだけれども、まぁ正味な話、この手のストーリーは少々レトロ感が漂うもんで目新しさはないかなと。
なので、この先どうなるんだ!?目が離せない!!みたいなハラハラドキドキするような展開を好む人にとってはいささか退屈かもしれない。
逆に、先の展開に予想がついたうえでそこまでの過程をじっくり楽しめるという人にとっては非常に味わい深い内容なのでは…と思う。
とは言え、やっぱり最後のあの衝撃的なシーンからのラストは予想出来ていてもグッとくるものがあったなぁ…。
ライブシーンの臨場感は圧巻
さて、「ライブがすげぇ!」とボヘミアン・ラプソディをレビューしたときにも書いたけれど、例に漏れず本作も映画館の巨大スクリーンで観るライブシーンはとにかく圧巻の一言。
とにかくもう主演の2人のライブパフォーマンスが凄いのなんの。
ガガ様は本職、しかも大スターだから迫力があるのはまだ分かる。でもクーパー様の完璧なまでのロックスターぶりは何なの?すんげぇ。
そしてこれがまたライブシーンの迫力が映像的にただ凄いっていうだけじゃなくて、そのライブシーンに到達するまでにしっかりと登場人物たちの物語が展開してきているわけです。そのライブシーンに感情移入してしまう材料をこれでもかと見せつけられてからのドーン!ですよ。
そりゃね、グッとくるって。反則だよこのパターン。涙腺を壊しにくる黄金パターンじゃんよ。
このシーンのドキドキしてる演技良かったなぁ
予告映像で散々見たあのシーンも登場人物たちのバックボーンをインプットしてから観るとこんなにも違って見えるのかと。
それこそボヘミアン・ラプソディのようなド派手な演出なんかはあまりないけれど、しっかり心にズシンとくる音と映像を堪能してほしい。
まとめ
ということで、本作はまさに『歌って、恋して、傷ついて―私は生まれ変わる』というキャッチコピーそのままのシンデレラストーリーだった。
そのうえ、『スター誕生』というタイトルから連想されるとある女性のシンデレラストーリーという主軸を持ちつつ、男女の繊細なラブストーリーも含んだ非常にドラマチックな物語でした。
仕事納めでホッとしているそこのあなた、年末は王道のラブコメと圧巻のライブシーンを是非とも劇場で楽しんでみてはいかがでしょうか。
それでは。