【映画レビュー】『クワイエット・プレイス』の上映中、前の席のジジイが1人でずっと喋っててクソワロタ【ネタバレあり】
映画が始まる前に上映マナーに関する映像が流れるじゃないですか。
今や超有名キャラとなった映画泥棒もまだまだスクリーンで大活躍しているし、パンパカパンツ(だっけ?)っていうザ・教育テレビ系のキャラも可愛く警告しているし、なんならバンドリのキャラたちも出てきたりと、上映前のあの時間って結構好き。
で、そこで決まって注意喚起される事項のなかに「上映中はお静かに」っていうのがあって、今回見てきた映画はまさに「音を立てたら即死」がテーマだったんで上映前から本編の内容と接点があって面白いなぁと思ってたんですよね。
けど、いざ本編が始まったら前の席のジジイが徹頭徹尾、ストーリーに対してツッコミを入れ続けてました。ジジイ、映画のなかだったら70回は死んでるぞ。
とは言え、実はちょっとジジイのツッコミに共感できる場面もあったんで、感想と共にそこらへんのツッコミどころのあるストーリーをご紹介できたらと思う。
人間を襲う「何か」って、おっ、おまえかぁーい!
近年のホラー映画って理不尽な設定のものが多くて、初期設定が既にHARDなものがとにかく多い。
これがホラゲーだったら難易度調整がガバガバで一部のマゾゲーマーにしか需要の無いクソゲーにすぐさま認定されそうなものばかりなのだけれど、この映画はまたちょっと違った意味でクソゲー認定されそうだ。
「ボーダーライン」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」のエミリー・ブラントが主演、ブラントの夫でもある俳優のジョン・クラシンスキーが監督・脚本を手がけ、全米でスマッシュヒットを記録したサスペンスホラー。
ブラントが主人公となる一家の母親エヴリンに扮し、エヴリンを支える夫のリーをクラシンスキーが自ら演じ、夫婦共演も果たした。聴覚障害を持つ娘役は、自身も同じ障害を持つ「ワンダーストラック」のミリセント・シモンズ。
音に反応して人間を襲う「何か」によって人類が滅亡の危機に瀕した世界で、「決して音を立ててはいけない」というルールを守り、生き延びている家族がいた。彼らは会話に手話を使い、歩くときは裸足で、道には砂を敷き詰め、静寂とともに暮らしていた。しかし、そんな一家を想像を絶する恐怖が襲う。
さて、『音を立てたら殺される』という設定を聞いて想像するのはすげぇ切れ味抜群の刃物を持ったメチャクチャ怖ぇ顔した人型の何かにやられるとか、そういうザ・ホラー的なやつをイメージするじゃないですか。
でも本作に出てくる驚異、つまり音を感知して襲いに来るのは
コイツ。
たっ、助けてぇぇ!リプリー!!!
これは私が勝手に亡霊的な何か、見えない恐怖と戦う話なんだと思い込んでいたのが悪いんですがね。音に反応して襲ってくる「何か」が概念的な存在であるとは一言も言ってないんで制作側は何も悪くないんですがね。
でもさぁ…。「恐怖の根源は地球外生命体、エイリアンがその正体でした!」みたいな展開で海の向こうの人たちは本当に満足だったの?
全米のホラー部門で圧倒的な支持を得たって聞いてワクワクしていたのに、まさかエイリアンが出てくるとは思わないじゃないですか。
案の定、ジジイも「おいおい、宇宙人(?)かよ。しらけるなぁ。」って言ってたし。分かるよジジイ。同感だよ。
舞台は世界が崩壊してしばらく経った後という設定。そんな世紀末状態の世界で覇権を取っていたのはヒャッハーたちでも、強敵(とも)たちでもなく、長兄・拳王でもなく、エイリアンでしたというお話。
そんななか音を立ててエイリアンにやられちまった幼い息子の犠牲に心を痛めつつ、新しい家族作ろうぜ!というチャレンジャー精神のもと子作りに励んだママが案の定、ピンチになっちまうという、文字にすると何ともお粗末なストーリー。
おかげで絶望的なシーンや緊迫した場面で「なんでこんなことに…!」みたいなことを言っていたような気もしたけれど、観ている側からすれば「いや、ちょっと考えれば分かったでしょ。自業自得ちゃうんかい。」とツッコミを入れざるを得なかった。
設定は面白かったゆえにいろいろと残念だった
音を出しちゃいけないという世界の設定そのものはすごく面白くて、音を出さないように生活する日々の知恵みたいなものが活用されているのもいいアイデアだった。(足音を消すように砂の上で生活するとか、SOSの信号はライトとか)
特に導入部分の映像はそれこそ息をのむというか、観ているこちら側(劇場内)も一体となって静寂に包まれるあの感覚はめちゃくちゃワクワクした。
一方、残念ながらツッコミどころ多数で、例えばエイリアンが襲いに来る音の基準・判定がガバガバで笑ってしまう。
あー!イライラするなぁ!ってなって大きな声で叫びたくなったら滝つぼの傍にいって叫べばセーフとか、花火の音でエイリアンの意識を引きつけるシーンの雑さとか、ここまで用意周到な家族ならパパ犠牲にならなくてもよかったんちゃう?とか、出産間近のママを1人きりにして案の定タイミングよく破水しちゃうとか、そもそもよく子作りできたなとか。
でもやっぱり1番笑ったのは「エイリアン、物理攻撃効くんかい!!」かなぁ。
「エイリアンの弱点は音です!聴覚が良すぎるがゆえに音に弱いのです!」みたいなことを言い出したときに「あぁぁぁwwwwあるあるぅwwwwよくある設定のやつぅぅぅwwwww」と思った矢先に銃でズトン。「ぐえ~wwwやられたンゴwwww」と呆気なく沈むエイリアン。なんだかなぁ。
そして極めつけは「ここならもう安心だ(防音室)」の大オチ。普通に喋ってやがる…。俺たちは今まで何を見せられていたんだ…。
ホラー映画と言うより家族愛でほっこりする映画でした
とは言え、本作をホラー映画として見ると「ちょっと違うんじゃねぇか?」と疑問に感じる部分が多いものの、近未来SFスリラー的な見方をするとそこそこ観れるんじゃないだろうか。
と言うのも、話の大半、主軸になっているのはエイリアンから襲われる恐怖ではなく、いかに家族で一致団結してエイリアンに立ち向かうか、この過酷な環境のなかを生き抜くかという部分にスポットが当たった物語なのだ。
つまり『音を出したら死んでしまうホラー』ではなく、『地球外生命体に対峙する家族のハートフルSF』と視点を変えるだけで評価が変わるような気がする。
続編も制作が決定しているらしいけど、きっと観ないだろう
ちなみに本作は低予算の自主製作映画であるという点も評価の対象になっているらしい。
超低予算の自主製作映画といえば今年、日本中で大ヒットを記録した映画『カメラを止めるな!』を思い出すが、単純にストーリーの出来栄えだけで言えばカメ止めの足元にも及ばなかったというのが正直なところ。
なんでも全米でのヒットを受けて既に続編の制作も決定しているようだが、もうお腹いっぱいだから次回作はスルーでいいかな。
「悪夢でしかない」(期待を裏切りやがって)
ということで、最後に前の席のジジイがエンドロールまで観終えたあとに吐き捨てたセリフで今回の〆にさせていただきたいと思う。
「これだったら1800円払ってウルトラビッグバナナサンデー食ったほうが幸せだったわ!」
それでは。