【映画レビュー】脳内ポイズンベリーの主人公は真木よう子ではなく西島秀俊と神木隆之介【ネタバレだらけ】
出典:脳内ポイズンベリー - 映画・映像|東宝WEB SITE
去年末から今年初めにかけてエンタメ業界を引っ掻き回したお騒がせ女優、真木よう子。
突然、とち狂ったかのように暴走し始め、やることなすこと全てが炎上した放火魔女優、真木よう子。
その様たるや、
「俺自身がメラモンになる事だ」
と言わんばかりであったが、なぜ前触れもなく、堰を切ったかのように奇行に走ったのか。
果たして真木よう子の脳内がポイズンベリーになった原因はなんだったのか?
…はい。
大半の方はもうお分かりかと思いますが、これを言いたいがためだけに本作を観ました。動機があまりにも不純。
で、観たはいいけれど結局あんまり面白いことも思いつかなかったので、このくだりをこれ以上掘り下げるのはよしておきますが、せっかく観たのでレビューでもしようと思います。
どうぞよろしく。
設定は良いだけに内容がいろいろと残念
『過去のトラウマから恋愛に奥手になっている女性の脳内では、擬人化した感情たちが日夜バッタバタの会議を繰り広げている』という設定自体はとても面白い。
だが現実で起こっていることと言えば、ダメ男に惚れて、いい人を散々振り回して、挙句に結局ダメ男とも別れて、最終的には一皮むけた私!という、ドラマチックのドの字もない話。
脳内では大地震が起きたり、謎の乱入者がいたり、急な大雨に降られたり、感情が欠如(=眠ったまま目を覚まさない)したり、心の砦が崩壊したりと、とにかくバッタバタしているのでなんとなく壮大なストーリーに見えてしまうが、現実世界で実際に起きていることを映画にしたら20分くらいで終わりそうなほどペラッペラ。
これが惜しいポイントだと思う。現実世界と脳内のドタバタがリンクするようなストーリーだったらもっと面白かっただろうし、どうせ原作の重要なシーンをバッサリとカットして中途半端になるくらいなら、いっそのことストーリーそのものを大幅に改変するくらいの思い切りがあっても良かったような気がする。
また、真木よう子はドラマ『最高の離婚』で演じた、何を考えているか分からない・ちょっと取っ付きづらい、でも本当は傷つきやすくてそんな自分を必死に誤魔化してるナイーブな女性みたいなキャラを演じているときが輝いていると思っているのだが、本作の真木よう子は2時間ブッ通しで脳内がお花畑のただ単にキマっちゃってる役だった。
これに関してはネット上のレビューを見ても明らかなミスキャストだろうという声が大多数で、擁護できないレベルに痛々しいというのが正直なところ。
なぜこんなにもミスキャストだと言われているのかといえば、それは男っ気のない冴えない三十路を演じるにはあまりにも邪魔な『美貌』と『オーラ』と『おっぱい』にある。
これらの要素の自己主張が強すぎて、真木よう子に冴えないキャラが定着しないままどんどん話が進んでいくために視聴者は置いてけぼりをくらうことになる。そしてとにかくおっぱいが気になって内容が頭に入ってこない。ボインボイン。
あと脳内会議を邪魔しに来る謎の女も、マーベルの女性ヴィランのコスプレをしたただの真木よう子で、コレジャナイ感が凄まじかった。そのうえ謎の女は最後まで謎のままで投げっぱなしジャーマンだったのにも驚き。
個人的にはドーパミンやらアルコールやらで一時的に普段の自分とは別人格が出てきて暴走しちゃうあの感じが謎の女の正体だということで結論付けましたが。
脳内のキャストについては素晴らしい(ブラックよう子を除く)
一方、本作を両手離しで褒められる点があるとすれば、それは脳内で会議をする5人の俳優・女優陣の演技だろう。
理性を司り、議長を務めるメガネ男子・吉田を演じるのは西島秀俊。
普段はクールで頼りがいのある役どころが多いように思えるが、本作ではそれとは真逆の優柔不断でどこか頼りないキャラを演じている。でも最終的にはしっかりと議長を務めあげる気概もあり、主人公と呼ぶに相応しいキャラクターだった。かなりツボ。
そして個人的にもう1人の主人公だと思っているのは、ポジティブな思考を司る石橋を演じる神木隆之介だと思っている。
もともと神木くんの演技が好きだという色眼鏡補正があることは否めないが、とにかく底抜けに明るいキャラを演じているときの神木くんはとても活き活きしていて、観ているこちらも自然とハッピーな気持ちにさせられるのだ。そういう意味ではポジティブキャラに神木くんをキャスティングしたスタッフは有能オブ有能であると思う。
一方、ネガティブな感情を司る池田を演じる吉田羊についてはいろいろとツッコミどころ満載。まず第一にキャラが強烈になりすぎていてネガティブと言うより、もはやヒステリックになっている。そのうえ事あるごとにカットインしてくるもんだから、これが何かと鼻につく。人によっては脳内会議のシーンでイライラしてしまうのではないだろうか。
ちなみにWikipediaにおける池田の紹介文にある『それなりに年のいった女性で、あらゆる行動に否定的消極的で嫌味な言動。』という一文には思わず笑ってしまうと同時に、それでいいのか吉田羊という気もしなくもないが、そういう意味ではヒステリーな演技もあえて狙ってやっている気がしてくる。ここらへんのさじ加減はなかなか難しいとは思うけれど、個人的にはもうちょっとマイルドでもよかったのではないかと思う。
あと「ボーッとしてるうちにあっという間に31、32、33、そして40になるのよ!」という歳を重ねることについて焦りを見せる場面については、何か演技以外のものが見えたような気がする。
とは言え、そういうところもすべてひっくるめてキャラを演じているのであれば、私はまんまと吉田羊にしてやられたということになる。
残る2人、衝動を司るハトコを演じる桜田ひよりちゃんは当時、若干12歳ながらハチャメチャで、いかにも衝動のみで行動しているおてんば娘を見事に演じ、記憶を司る岸を演じる浅野和之はさすがベテランといったところで渋いながらもコメディらしく茶目っ気のある演技が素晴らしかった。
誰得な映画版シナリオ
ラストは『新たな恋が始まりそう』的なオチで締めくくられ、コメディ映画の落としどころとしては無難だったんじゃないかと思う。
とは言え、この手の映画で登場人物も視聴者も誰一人として得をしないエンディングというのはいささか消化不良な気もする。
てっきり「ここにイケメンがおるじゃろ。そしてこっちに美女がおるじゃろ。これを合わせるとハッピーエンドに...」的な王道の終わり方をするもんだとばかり思っていたが、むしろこんな微妙なオチにするんならコッテコテの王道エンドでも良かったんじゃ…。
西島秀俊と神木隆之介を愛でよ
さて、本作についてボロクソに言いましたが、結論としてはこれ。
西島秀俊と神木隆之介が好きなら観ないという選択肢はない。そうでなければ観なくて良い。実に単純明快でよろしい。
もちろん、100%高純度のクソ映画かと言われるとそうでもなく、『本当の意味で前向きになる=崩れていた心の砦が復活する』という演出は良かったし『2時間かけて1人の男に散々振り回されたけど、ラストでまたあっさり恋に落ちる描写が運命なんて所詮はこんなもんなのよ』という皮肉が効いていて、そのあたりもよかったと感じた。
だけど、それを元にこの映画をオススメできるかと言われると…。うーん…。
ちなみに、ピクサーの『インサイドヘッド』と内容を比べる声が多いことでも話題の本作。
ともなれば、パクった・パクられた論争が起こるのは毎度お馴染みのことだが、本作は2010年から不定期で連載されていた漫画の実写版である。
設定の初出自体はこちらのほうが早かったのにも関わらず、「同じ題材なのにインサイドヘッドとの出来の差を痛感させられる映画」と評されてしまう本作もまた、制作スタッフに愛されなかっただけの被害者なのかもしれない。
出演しているキャストは超豪華なだけに、いろいろと残念な点が目立つ惜しい映画だった。
ということでレビューとしてはこんな感じで。
それでは。