イヤホンしてる人に「いまなに聴いてるの?」って質問するやつさぁ、じゃあ逆に聞くけどそれを聞いてどうすんの?
純粋にそれを聞いてどうすんの?という疑問が拭えないこの質問。
いやまぁ、聞いたほうも別にそこまで深い意味はないとか、話の導入になんとなく聞いただけで実際は微塵も興味ないとかいろいろ思うところもあるんだろうけれど、実はこの質問はするほうもされるほうも得をしない地獄のワードであるということはお伝えしておきたい。
今回はそういう話です。よろしくどうぞ。
その質問は修羅の道ぞ
別にそんなに気にすることないんじゃ?深く考えすぎなんじゃ?と言われればそれまでなんだけど、私としては聞かれた以上この答えによって相手がどう受け取るのかを思考するフェーズを挟むことになるわけで。
シチュエーション別のプレイリストを作っていて、朝仕事に行くときはこの曲、雨の日の休日はこの曲、風呂に入るときはこの曲、夜ドライブをするときはこの曲、と聴き分けているくらいにはNO MUSIC、NO LIFEなワタクシ。
ともなれば音楽に関する話題は普段の会話のなかでもそれなりに重要度が高く設定されている。
これが気心の知れた友人からサラッと「いまなに聴いてんの?」と聞かれたのであれば、待ってましたと言わんばかりに最近イチ推しのバンドについて意気揚々とニヤケ顔で語り始めるところ。
がしかし、これが会社の同僚だとか、顔見知り程度の人が相手となると途端に返答の難易度が上がる。なぜならこの質問をされた時点で9割方、地獄行きが決まってしまっているからなのだ。
どういうことなのか。それはこの手の質問が盛り上がるかどうかは聞いてきた側のトークスキルに依存するからである。
例えば質問者がかなりの音楽通だったとする。するとメジャーな曲でもマイナーな曲でも、アーティストの豆知識や近しいジャンルの流行などを会話に混ぜ込みながらそれこそ無限に話を展開していけるのだ。
もしくは音楽は正直あまり詳しくないという人であっても、トーク力が平均以上ある人ならば自然な流れで会話が続くから特に心配することはない。
一方、タチが悪いのは大して音楽に詳しくもなく最近のヒットチャートもノーマーク、そのうえ次の会話の流れも考えていないという頭カラッポのヤツ。
なんとなく、深い意味もなく、特に興味もない質問だからメジャーな曲だろうと最近のヒットチャートだろうと、もちろんマイナー曲であっても返ってくる返事はだいたい「へー」「ふーん」「そうなんだー」の3パターン。
「へー」「ふーん」「そうなんだー」は会話の終着点だから、それ以上の拡がりをみせることもない。それでもなんとか盛り上げようと会話を続ければ続けるほど深みにハマっていく底なし沼。
さっさとこの話題は切り上げるのが正解だったと気付いたころには気力も体力もかなり消耗している。時間と気力を返せよ。
そしてそこに残るのは虚無。
一方、質問する側にとってもこの質問はなかなかにリスキーだと思っている。
考えてもみてほしい。もしもあなたがうっかりこの質問をしてしまったとする。
そこで急に相手のスイッチが入り、このコアでパンクなグルーヴがアッパーなソウルにクリーンヒットとか熱く語られても、きっとこう言うしかない。
「へー」
もしくは「ふーん」「そうだんだー」
正確には「へ、へぇ…(苦笑)」「ふーん(ドン引き)「そ、そうなんだぁ(困惑)」。
そう。たとえ平均以上のトーク力を持ち合わせた人であったとしても、コアでパンクなグルーヴの前には成す術がないのだ。だって言ってる意味がわかんないもん。
そのうえ、聴いているのが超マイナーな曲だったりした日には、もはや地獄。
「いま何聴いてるの?」
「スリジャヤワルダナプラコッテの、I am SANAGI。」
「え?なんの?え???」
「だからぁ、スリジャヤワルダナプラコッテの、I am SANAGI!」
「・・・」
挙句、適当に感想とか言ったら意外と向こうもノッてきちゃって、スリジャヤワルダナプラコッテのベストアルバムを貸してくれちゃったりするわけで。
一応、聴いた感想とかを言わなきゃいけないと思って、仕事で疲れてヘトヘトなのにノルマとして聴かなきゃならない「I am SANAGI」。
自身の理解の範疇を遥かに飛び越えた前衛的すぎるCDジャケットに満面の笑みの「スリジャヤワルダナプラコッテ」。
感想を言うために仕方なく聴いただけなのになぜか脳裏に強烈にこびりついて離れない「I am SANAGI」。
嫌だなぁ。聴きたくねぇよ。 I am SANAGI。
みなさんは聴きたいですか? I am SANAGI。